英会話に必要なのは「スルーしない力(りょく)」
アメリカに引っ越してもうすぐ11年。決して流暢ではないが、生活やビジネスに必要な程度の英語はできていると思っている。仕事上、日本人とアメリカ人の商談の場に同席することが多いのだが、英語による会話が通じるのに必要なのはボキャブラリーや発音などでは無く、「通じたい」「理解したい」と思う強さと、「わからなかった」「通じてないかも」をスルーできない「スルーしない力(りょく)」なのだとつくづく感じる。
多くの日本人、特に英語がある程度できる(と、思っている)ビジネス、セールス系の人に共通するのは、相手の話を全体で理解しようとして、細部で聞き取れないところや、わからなかった表現があってもそこで話しを中断せずに進めてしまう傾向だ。アメリカ人側が曖昧な表現などをして、横で聞いていて「え、今のちゃんと分かってる?」と心配になっても、この人達は、「Yes, Yes, Oh Yeah」などと相槌を打っている。でも、しばらく会話が続くと、ここを理解していなかったせいで話がずれてゆくというケースをよく見かける。
逆に、日本人側が喋るシーンでも、「あ、今の表現通じないんじゃないかな?」と、思って聞いていると、やはり相手側が「こういう事ですね?」と確認してくる。そこで、相手の理解との間にずれがあっても、この手の日本人は相手の誤解を面と向かって否定しにくいのか、「Yes, Yes」と言って話しを続けてしまう。
で、結果的にミーティングが終わって、日本語でフォローアップすると、実は重要なところを6割も理解していないし、相手にも通じていない、という現場を何度も見てきた。もちろん、自分にできる範囲ではその場で誤解を解くために「今のはこういう意味ですね?」とできるだけ口をはさむが、そうもいかないシチュエーションも多い。
一方、エンジニア系の人に多いのは英語自体はあまり流暢でも格好良くもないが、通じるまでしつこく食い下がるタイプ。わからない時は格好を付けずにしつこく理解できるまで聞き返し、こちらの伝えたい事もちゃんと伝わったと確信できるまで何度でも繰り返す。相手の言ったことを、自分の言葉で言い直して聞き返す。横からみていてもしつこいと思うほど確認を繰り返す。
このタイプの人の場合は、ミーティングが終わった後の理解度では、専門用語や業界を知らない私より、細部まで細かく理解できているケースが多い。
こうした両極端を見ていて思うのは、「伝えたい」という気持ちが強く、わからないのに分かったふりをしない「スルーしない力」の強い人の方が、ちゃんとコミュニケーションを成立させている一方で、発音や表現力にちょっと自信があって、話の流れを止めたくない人の方が全体で正確に伝わった情報量が少ないということだ。
そう考えると、初等教育で英語を十分に学んでいないが、会話で相手に合わせず常にマイペースな中南米の人の方が英語社会で力強く生きているのもわかるような気がする。
もちろん、この「スルーしない力(りょく)」は直接対話でしか有効でなく、多数を相手にした講演やテレビの英語を聞いたり、プレゼンテーションで発表するといった場ではうまくいかない場合もある。
一対一の対話なら、通じるまであきらめない根性があれば、英語力なんてちっぽけでも、最後には必ず通じ合えるという事だ。
仕事のミーティングの後に、アメリカ人が腹を割って話したがるのはいつも、英語が下手だけど、スルーしない力が強いタイプの方だ。















